技術と経験の積み重ねであるタイヤ作りのハードルを、IRCはときに、野心をも含んだ挑戦心で乗り越えてきた。
開発陣の情熱が実を結んだ、5つのストーリーを振り返る。

episode.5 Like a family

“バルーン”の名の下に

井上バルーン会に所属する代理店が集まり、親睦を図る機会が定期的に設けられていた

 統制経済から自由経済への大転換──。戦後、自由に物を売り買いできる状況に初めて置かれた井上ゴムの関係者は皆、これまでと勝手の違う自由経済を前に、戸惑いと不安に直面した。

 経済の激変に対応するには、商習慣の見直しとともに新たなビジネススタイルの構築が必須。そこでまず採られた策が、メーカーと販売店の協力体制の強化だった。全国から引き合いが殺到するなか、数量を捌くことよりも信頼関係を第一とした契約を結び、代理店(問屋)だけでなく、その先の特約店(小売店)も含めた巨大な流通網を築きあげたのだった。

 時代の波を団結して乗り切り、最盛期には8000軒もの会員を有した“井上バルーン会”。「親戚のようにつき合う」をモットーに、人と人の結びつきを大切にする企業文化は、創業90年を迎えた今日も脈々と息づいている。